奥様がこんな話をしてくださいました。それは上杉氏が小渕内閣で内閣官房副長官をしておられて、過労で倒れられたときのお話です。
上杉氏が病気で倒れられた話は有名ですが、詳細はほんの一握りの人達しか知らないことでした。
「あの日は丁度お盆の最終日の8月16日でした。宮崎から東京に戻りまして、夕方5時に発作を起こしたのです。秘書はすぐにかかりつけの病院に連絡を取り、自家用車で病院に運び込みました。まことに運が良く、その日はお盆の最後の休日ということもあって車が少なく、普通は30分以上かかるところをほんの12、3分で病院に着きました。
おまけに、翌日は主人と同じ病気の人が手術をするというので、手術の用意がすっかり整っていたのです。その手術担当チームは翌日の手術の機械器具の点検、手術の打ち合わせが終わったばかりで全員揃っていました。それで、病院に着くとすぐ検査をしまして、手術に早く取り掛かることができました。
本当に奇跡的に全てが良い方に働いてくれたのです。この時ほど、主人はまだ世のために必要な人なのかもしれないと思ったことはありませんでした」
「もと肥えすぎ、いま上杉」と親しい人から冷やかされるほど、彼は元気になりました。
強運の持ち主であること、また政治家としての宿命を負った人であることが、垣間見えたようなお話でした。
(コピーライター 北村多喜子 平成14年12月) |