2 三つの約束事


高校生時代 現在の上杉氏が在る背景には祖父母、両親の影響が大でした。
ある日のこと、祖父は上杉少年に三つの約束事を話してくれました。それは上杉家に代々伝わる『家訓』です。
「おまえが将来、人からどんなふうにして見られるか、信用される人間になれるか、それはとても大切なことなんだよ。これから言う三つの約束事は、うちに昔から伝わる事だから、おまえもずっと守っていかにやならん。よく覚えておきなさい」
それは次のような言葉でした。

『嘘をつくな』 嘘をつくと信用をなくす。
『告げ口をするな』 もめ事の原因なる。
『恩を着せるな』 してやったことが無意味になる。

それはまだ幼かった少年にもよく理解できるものでした。上杉少年はこの言葉を絶対に忘れることはなく、現在の上杉氏の人格を形成してきた礎となるものでした。
この『家訓』には、「これらのことを犯せば世間から信用されないばかりか、活動、言動の範囲が狭くなり、思い切った事ができなくなる」という、大きな意味がありました。


上杉家のヒューマニズム


 また、上杉氏の人間好きヒューマニズムが育ったのは、上杉家の人間関係が大きく影響していました。
上杉家では子供も大人も使用人も、等しく同じものを食べていました。それは、「人間同じように働いていれば、同じ物を食べて当たり前、食べたいという自然的欲求も、上下に関係なく同じである」という、両親、祖父母の考えがありました。この考えは自然と他のことにも影響していき、その平等意識は上杉家の家風となっていました。
この事はのちに上杉氏の人に対しての平等感、下で働く人達に対しての思いやりに繋がっていきました。

 奥様のお話
「上杉の祖父母には子供がいなかったのですよ。それで上杉の父親は祖父の姉の子を養子としました。祖父母はそれはそれは上杉をかわいがってくれたようです。とても大切に育ててもらったと聞いています。ですから上杉はおじいちゃん子、おばあちゃん子なんですよ」

 このように、厳しいながらも愛情溢れる家族の中で育った上杉少年は、明朗闊達で人にやさしく、また冒険心や探求心、好奇心の旺盛な少年へと育っていったようです。

(コピーライター 北村多喜子 平成14年12月)