8 多趣味、そして勉強家


 趣味をお伺いしたら、「多趣味です。日本の古いものが好きです。日本人の長い歴史の中で蓄積された魂と技術と文化が語りかけてくれます。ものを言わない小鳥、犬、草木も好きです。嘘のない関係で私に応えてくれます。書道も絵も好きです」という答えが返ってきました。
彼が口癖のようにいう宮崎県の古来の伝統・文化・芸能・匠を大切にする心も解ってきたような気がしました。
そして、「人は死ぬまで進化すべきで、そのための勉強、読書は欠かしません」とおっしゃいました。「我以外皆師なり」という言葉も引用されました。勉強家とは聞いていましたが、本の乱読、速読は特技のようでした。少しの暇を見つけては読んでおられ、車の中、就寝前、少しの待ち時間など、そのときどきに合わせて、本を用意しているのだそうです。
上杉氏は農家の出身で農業の専門家と思いながらお話をお伺いした私は、彼の幅広い知識、話題の広さに戸惑っていましたが、そのわけがここにきてようやく解りました。政策通といわれるのも、この勉強あってのことでしょう。
お話の中で、「修身斉家治国平天下(しゅうしんせいかちこくへいてんか)」など中国のことわざが飛び出してきたことも印象に残りました。

 おもしろい趣味の一つに家相診断と姓名判断があります。これも凝り性の性格が影響してか、プロ並みの判断力だそうです。人の名前を付けてあげたり、自分の家を家相診断したりして、ひととき楽しんでおられるようです。
また、独学で焼酎の製法とスピリッツの製法の特許を持っているという幅の広さにはびっくりしました。
上杉氏の政治家としての表面を離れて、個人として見たとき、どこにでもいる人物像が見えますが、しかし、何事にも熱心で行動力があり、探求心が旺盛なのは常人と違います。この情熱と探求心が政治家としての上杉氏を形づくっているのだと思いました。

 上杉氏は政治家としての座右の銘に、二宮尊徳の名言「政(まつりごと)は豆腐の箱のごとし。箱ゆがめば豆腐ゆがむなり」を選んでおられますが、それは常に自分を律して止まない上杉氏らしい言葉だと思います。

 最後に、旧来の友人である佐土原町議会議員の永野繁利氏の言葉を載せます。

 「彼には情熱と使命感と積極性があった。信念があり、頑固だった。私たちは彼を山の上の家まで行って引っ張り出してきたが、しかし、我々が何もしなくても、やはり彼は出てきたでしょう。彼のエネルギーと探求心は、広い世界に出ていくためのものだったと今更ながら思えるね」


(コピーライター 北村多喜子 平成14年12月)